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第三種電気主任技術者 機械ー誘導電動機1

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第三種電気主任技術者試験(以降電験三種)の誘導電動機についてまとめる。

誘導電動機とは?

 誘導電動機(Induction Motor,IM)は交流で磁界を回転させ、 その磁界で回転子(ロータ)に誘導電流を発生させることで回転子を回転させるモータのこと。電動機はモータという意味。 原理は一円玉の上で磁石を動かしたら1円玉が少し動く現象と同じ

商用電源を接続するだけで回転するので、これまで多くの場所で使われてきた。ただし、大型の誘導電動機や負荷トルクが大きいと後述する工夫をしないと始動できない。

 また、模型用モータのように永久磁石を使わないので、小型で高出力なものは作りづらい。 この誘導電動機は交流モータの代表格で、工場などに行くとあちらこちらに見える。

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誘導電動機(ベルトで動力を伝達している)

誘導電動機の種類

  誘導電動機は使用する交流電源で三相誘導電動機単相誘導電動機に大別される。 また、回転子の構想でかご型誘導電動機巻線型誘導電動機に分かれる。

三相誘導電動機は、三相交流で回転する誘導電動機で三相交流の特性で回転方向が工夫せずに一意に決まり、回転も安定するので工場で頻繁に使われている。

単相誘導電動機は、通常の100Vコンセントのような一相のみで回転させる誘導電動機。安価な扇風機や、小型の電動工具で使われる。三相交流と異なり、回転方向が一意に定まらないので一方向に回転させるには「くまとりコイル」やコンデンサを使用して工夫しないといけない。

かご型誘導電動機は、文字通りかごのような形をした導体で回転子を作る誘導電動機。実際にはかごの中は、鉄心が入っているが原理的にはかごのみで回転することができる。構造が簡単で摩耗部品がメンテナンスを頻繁にしなくても良いので、広く普及している。

巻き線型誘導電動機は、回転子にも交流を流してコイルで回転磁界を生成して高出力にするモータ。回転子にも電源供給する必要があるので、スリップリングを介して電気を流す。基本的に大型の三相誘導電動機で採用されるもので、圧延機や大型の巻上げ機などに使用されるらしいが私は未だ見たことがない。スリップリングを使用しているので、定期的に点検が必要。

補足

 一般的な工場でみる、誘導電動機は大体、三相かご型誘導電動機だと思ってよい。近年は永久磁石同期電動機(IPM)も増えているらしいので、近くにインバータの種類で見分ける等が必要。 因みに、三相かご型誘導電動機はインバータなしでも動作できるが、永久磁石同期電動機は基本的にインバータで制御する。ただし、三相かご型誘導電動機も効率改善、性能向上のためインバータで制御することも多い。

三相交流とは

 三相交流は下図のように同じ電圧、周波数の3本の交流のことで、それぞれが120°位相がずれている。この三相を一つに結線すると、それぞれの電圧を打ち消してしまうので結線した点で電圧が0になる。

この特性があるので3本の線で三相を送電することができる。 逆に、位相ずれが120°ではない、もしくは3相で電圧が違うと、3相を送電するのに4本の電線が必要になる。

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三相交流Windowsの電卓便利)
単相は下のように一本しか相がないが電線は2本必要。
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単相波形

誘導電動機のメリット

 誘導電動機がどんなものか、どんな種類があるのか紹介したが、どのようなメリットがあるのか紹介していく。代表的なメリットは次の通り。

  • 構造が比較的簡単
  • 安価
  • 高信頼性(定期的にベアリングの交換すればずっと回ってる)
  • インバータがいらない
  • 小型なら商用電源につなぐだけで回転する

ただし、巻き線型誘導電動機は構造が少し複雑でスリップリングも定期的に交換する必要がある。

誘導電動機のデメリット

  • 回転数を変更するのが面倒(インバータが必要になったり、効率を下げたり)
  • 回転数とトルクの関係が複雑(ある程度の回転数がないと出力トルクが最大にならない)
  • 回転磁界の回転速度と回転子の回転速度が一致しない(すべり)
  • 力率が低い

誘導電動機が使われている場所

 誘導電動機には前述したような、メリット・デメリットがあるので適した用途と適さない用途がある。 基本的に常に一定の回転速度や、決められた数段階の回転速度で回ればよいという用途が多い。

例えば、工作機械、ベルトコンベア、電車、エレベーター、扇風機等、ポンプの動力 として使われ、回転速度は「電流を流すコイルの数(極数)を変更」したり、「減速比を変更」したり、「固定子のコイルに抵抗を直列接続」することで変更することが多い。

誘導電動機の特性

 誘導電動機の特性で重要となる式がいくつかある。まず回転数に関しては下の(1),(2),(3)式だ。

式(1)は回転磁界の回転速度(同期速度)を求める数式で、電源の周波数を極数で割った値をrpmに変換するために120をかけている。 式(2)はすべりの式で、同期速度の何%で回転子の速度が遅いかを表す。 式(3)は式(2)を変形したもので、すべりと同期速度がわかったら回転数がわかることを示す。

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すべりとは

 すべりとは式(2)で示したとおり、同期速度に対して回転子の速度のロス分のことだ。ではなぜ、誘導電動機は同期速度以上で回転子を回転させることはできないのか。

 それは、回転磁界が回転子の周りをまわることで、回転子に誘導起電力が発生して電流が流れ、回転磁界に吸い付く磁力が発生するからだ。そのため、回転磁界と回転子が同じ速度で回転すると誘導起電力が発生せずに回転数が落ちてしまう。回転数が落ちたらまた誘導起電力が発生するので、どこかの回転数で釣り合うことになる。これがすべりである。  

参考文献

次回

誘導電動機のトルク回転数特性
誘導電動機の始動法

kirikoshokunin.hatenablog.com

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